遺言書の作成

遺言書作成

遺言書の作成というと、高齢の方が行うもの会社経営者や事業をしている方が作成するものというイメージをお持ちの方が多いのですが、実はそうではなく、例えばお若い方やお仕事をされている方でも遺言書を作成しておくことが望ましいケースがあります。

遺言書を作成しておいたほうが望ましいケース

遺言書を作成しておいたほうが望ましいと考えられるケースをいくつかご紹介し、遺言書を作成しておいたほうがよいと考えられる理由をご紹介します。

相続人のなかに高齢の方がいらっしゃる場合

相続が発生し、どの財産を誰が受け継ぐのかを話し合う(この話し合いを遺産分割協議といいます)場面において、相続人のなかに高齢で認知症の方がいらっしゃると、この話し合いが有効に成立しない場合があります。

その理由としては、認知症が進み判断能力を失っていたり大きく低下している場合、その方が単独で遺産分割協議に参加することができないという点が挙げられます。

遺産分割協議は相続人全員で行わなければ無効となりますので、相続人のなかに判断能力を失っていたり大きく低下している方がいる場合、遺産分割協議の前提として、家庭裁判所に後見人等の選任申立てを行う必要があります。

家庭裁判所に後見人等の選任申立てを行い、後見人が選任され、実際に遺産分割協議を行うとなると相当の期間を要しますし、申立ての手間も(もし専門家に申立てのサポートを依頼する場合はその費用も)かかってきます。

この点、遺言書を作成しておけば、遺産分割協議を行うことなく、遺言される方が何の財産を誰に残すかを指定することができますので、相続人のなかに高齢の方がいらっしゃる場合でも安心です。

相続人以外の方に財産を残したい場合

どなたが相続人になるかは民法で定められていますので、もし相続人以外の方に財産を残したい場合は、あらかじめ遺言書で定めておく必要があります。

よくあるのは、お孫さん、兄弟姉妹(相続人とならない場合の)、甥姪、内縁の配偶者の方に財産を残してあげたいと希望されているケースです。

また、ご自身が亡くなったあとに、特定の団体に財産を寄付したい(遺贈寄付)というご希望も叶えることができます。

シングルで未成年のお子さんを育てている場合

現時点において日本の民法では、父母が離婚した場合、どちらかが子どもさんの親権を持つことになります(これを単独親権といいます)。

例えば、離婚によりお母さまが子どもさんの親権を持っており、子どもさんが未成年のあいだにお母さまに万が一のことがあった場合、親権を行う方がいないという状態になり、未成年後見人が選任されることになります。未成年後見人とは親代わりの人とイメージしていただくとよいかと思います。離婚により親権を持たないと定められたお父さまが未成年後見人になる、ということは法律上可能です。

しかし、離婚した元パートナーに未成年後見になってもらいたくないとお考えになる場合や、離婚ではなく配偶者の方と死別された場合などは、あらかじめ遺言書で信頼できる方を未成年後見人として指定しておくことで、ご自身に万が一のことがあった場合に備えることができます。

遺言書の種類

遺言書には大きく分けて、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。

公正証書遺言とは、公証役場で、公証人1名と証人2名の面前で遺言内容を確認して作成する遺言書となります。事前に、公証人が遺言書の内容につき、法的な観点でチェックをしてくれるのと、作成した遺言書については、公証役場で厳重に保管してもらうことができ、紛失や内容の改ざんといったリスクがないという点が安心と言えるでしょう。

次に、自筆証書遺言書とは、ご自身が手書きで作成する遺言書となります。公正証書遺言と違って、公証人や証人に関与してもらう必要がなく、思い立った時にいつでも作成でき、内容の変更についても気軽にすることができます。

それぞれメリットとデメリットがありますので、比較して特徴をご説明いたします。

公正証書遺言と自筆証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言自筆証書遺言
メリット・公証人が遺言書の内容について事前にチェックをしてくれる

・作成した遺言書は、公証役場において、データと紙で厳重に保管してもらうことができる
・費用をかけずに、ご自身で気軽に作成することができる

・遺言書の内容について、誰にも知られずに作成することができる
デメリット・公証役場に支払う手数料が発生する

・専門家に依頼する費用が発生する

・遺言書作成の場面において、戸籍謄本などの書類を集める必要がある
・形式的な要件を満たしていないと無効になる

・相続のとき、家庭裁判所で検認の手続きが必要となる

・置いている場所などによって、誰にも見つけてもらえない可能性がある

法務局での自筆証書遺言保管制度

上記で見たように、作成のときに手間と費用がかかっても安心感が得られるのが公正証書遺言で、気軽に作成できる反面リスクもあるのが自筆証書遺言ということになりますが、自筆証書遺言を法務局で保管してもらうという制度があります。

法務局で自筆証書遺言を保管してくれ、相続が開始したときも家庭裁判所での検認手続きをする必要がありません。手数料も遺言書1通につき3,900円と、公正証書遺言と比べるとかなりリーズナブルです。また、事前に法務局に「指定者通知」という通知を希望しておくと、通知してほしいと希望した方に対して、法務局から「〇〇さんの遺言書が、〇〇法務局に保管されていますよ」という通知が届きますので、せっかく作った自筆証書遺言を相続人に見つけてもらうことができなかった…という不測の事態を避けることができます。

ただ、この自筆証書保管制度を利用するためには、必ず遺言される方ご本人が法務局に出向く必要があります。そのため、寝たきりの方や法務局に出向くことができないという方の場合は、利用が難しい可能性があります。(この点、公正証書遺言の場合は、公証人にご自宅や病院、介護施設等まで出張しててもらうことができます。ただし、出張料が別途かかります。)

結論 どの遺言書の形式を選ぶべきか

遺言書の種類や、それぞれのメリット・デメリットをご紹介しましたが、どの形式が適しているかは、遺言を残される方によって異なります。当事務所では、どの遺言書の形式をとられるべきか、というご相談から、実際の作成のサポートまで承っております。

遺言書は、残されたご家族への最後のお手紙と言えます。お気持ちに沿った形で遺言書を作成できるようお手伝いさせていただきます。