相続放棄

相続放棄

相続放棄とは、お亡くなりになった人の財産をすべて放棄するという手続きであり、ここでいう財産とは、現金や預貯金、不動産といったプラスの財産に限られず、借金などのマイナスの財産も含まれます。ご相談いただくことが最も多いのは、お亡くなりになった方が借金を抱えていて、相続人の方がその借金の支払い義務を負わずに済むように相続放棄をしたいというケースです。

ただ、借金がないと相続放棄ができないというわけではなく、親族と遺産分割協議をすることが煩わしいから相続放棄をするという方や、借金があるかどうかがわからないため念のため相続放棄をしておきたいという方もいらっしゃいます。

相続放棄は、お亡くなりになった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄申述書と添付書類を提出する、という形式で行う必要があります。時々、「私は何も遺産はいりません」と他の相続人の方等に伝えるだけで相続放棄の手続きが完了していると思われる方もいらっしゃいますが、きちんと期限内に家庭裁判所に申立てをしないと相続放棄をしたとはいえません。

当事務所では、家庭裁判所に提出する申述書の作成、添付書類の取得、家庭裁判所から届く照会書への書き方サポート、家庭裁判所への受理証明書請求、といった一連の手続きを承っております。

相続放棄できる期限(タイムリミット)について

相続放棄は3か月以内にしなければならない、ということを聞かれたことがある方は多いと思います。では、この3か月はいったい「いつの時点からの3か月」を意味するのでしょうか?

民法では、相続放棄できる期限については「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」と定められています。「自己のために相続の開始があったことを知った時」がいつにあたるのか、次の例を見ながらご説明します。

例1:同居している配偶者の方が亡くなったケース

令和6年4月1日に司法太郎さんが亡くなり、相続人は同居している妻の司法花子さんと、結婚してすでに実家を出ている長女の八尾市子さんの2人でした。

相続人である妻の司法花子さん、長女の八尾市子さんは、司法太郎さんが亡くなるときも病院で付き添っていたため、当然亡くなった当日である令和6年4月1日に「自己のために相続の開始があったことを知った」と言えます。

例2:付き合いのない父親が亡くなったケース

令和6年4月1日に司法二郎さんが亡くなり、相続人は二郎さんが若いころに離婚したっきりまったく付き合いがない長男の大阪士郎さんの1人のみです。長男の大阪士郎さんは、司法二郎さんが生前住んでいた大阪府八尾市の生活保護課からの手紙を令和6年7月10日に受け取り、初めて父である司法二郎さんが亡くなっていたことを知りました。

このケースでは、長男の大阪士郎さんは、司法二郎さんが亡くなった当日である令和6年4月1日の時点では自己のために相続が発生したことはつゆ知らなかったため、大阪府八尾市からの手紙を受け取った令和6年7月10日が「自己のために相続の開始があったことを知った」日ということになります。

※このケースでは、長男の大阪士郎さんが相続放棄をする際、司法二郎さんが亡くなってからすでに3か月が経過しているため、上申書に令和6年7月10日が自己のために相続の開始があったことを知った日であることを記載したり、大阪府八尾市から届いた手紙のコピーを提出する必要があります。

相続放棄手続きの流れ

相続放棄の手続きは、次のような流れで進めていきます。前述したように、相続放棄には期限がありますので、相続放棄をご希望される場合はお早目にご相談・ご依頼(ご自身で手続きをされる場合はお早目に手続き)をいただくことをお勧めいたします。

  1. 相続放棄に必要となる書類を集める 
  2. 相続放棄申述書を作成する
  3. 期限内に、管轄の家庭裁判所に相続放棄申述書と添付書類を提出する
  4. 家庭裁判所から届いた照会書に期限内に回答する
  5. 家庭裁判所から相続放棄を受理した旨の通知書が届く
  6. 家庭裁判所に相続放棄受理証明書を請求する

お亡くなりになった方に借金があるかどうか調べたい場合

あくまで私の経験上ですが、相続放棄についてご相談をいただく場合、お亡くなりになった方が借金を抱えていたので、相続人がその借金を引き継ぎたくないというケースが最も多いです。相続人の方が、お亡くなりになった方がどこから、いくらぐらい借金があるかを把握されている場合はいいのですが、借金の有無についてまったく見当もつかない、どうやら借金があったようだがどこからいくら借りているかわからないという場合もあります。

そのような場合、相続人の方から個人信用情報機関に対して、お亡くなりになった方の信用情報を開示請求するという方法があります。個人信用情報機関とは、金融機関や貸金業者が加入しており、「誰が、どこから、どういう契約で、いくら負債があるか」といった信用情報が登録されています。プライバシーに深く関わる情報ですので、本来はご本人からの請求となるのですが、ご本人がお亡くなりになっている場合は相続人であることを証明することで、相続人の方から請求することも可能です。

個人信用情報機関には、以下の3つがあり、それぞれの機関によって開示請求の方法や請求用紙などが異なります。できれば3つともに開示請求をいただくほうがよいかと思います。

  1. 全国銀行協会
  2. CIC
  3. JICC

ただ、ご注意いただきたいのは、この3つの信用情報機関からお亡くなりになった方の信用情報を開示してもらったとしても、個人間でのお金の貸し借りなどについては情報が出てこないという点です。